高尾こんの歯科医院

外観は、漆喰調の左官壁や木製サッシ、患者さんを迎える板張りのポーチなどカフェや住宅のような雰囲気のしつらえ。ポーチ部分は、内と外の中間領域であり雨の日は傘を閉じる場所にもなります。

天井高さを生かした待合室と受付。壁は漆喰、床は無垢床で構成されています。受付の脇のコルクタイルを敷いたアルコーブは、キッズコーナーです。

リネンカーテン越しに柔らかな日差しを感じられる診療室(ユニット3)。壁は漆喰、床は抗菌効果のある自然素材のリノリウムです。

診療室(ユニット3)から見たカウンセリングコーナー。内部は、曲線を多用したミニマムで包み込まれるような空間です。

カウンセリングコーナーの壁も漆喰仕上げ。温かみのある空間でゆっくりお話を進めて頂けます。

ユニット2は、小さなお子様と一緒に治療を受けることができるベビーサークルを設置。お子様連れでも通える歯科医院を形にしました。

  

漆喰と木に囲まれた通路はトンネルのような空間。待合室は温かみのある灯、診療室はすっきしりとした治療に適した色の灯を用いています。

  

  

  

素材感があって可愛らしいディテールを、いろいろなところに採用しています。

 

高尾こんの歯科医院

この歯科医院の計画は、院長先生から「山に囲まれた自然豊かな高尾のイメージと調和し、山の麓のカフェでホッとしているような気分になれる歯科医院に」というオーダーを頂きスタートしました。内装材は自然素材を使い、温かみのある心地よい空間をつくりたいという要望もありました。打ち合わせを重ね、手入れのしやすさを優先したツルツル、ピカピカした空間ではなく、少し手間はかかるけれど、自然素材に囲まれたホッとできる歯科医院を造ることを目指しました。

患者さんの利用する空間は、診療所としては充分な天井高を活かし、高低差を設けた空間構成を検討しました。待合室は、高さを活かした伸びやかな空間とし、トンネル状の通路を抜けた診療室は、リラックスして治療を受けていただけるよう低い空間から解放されるような勾配天井による構成としています。
また、患者さんとお話をするカウンセリングコーナーは、曲線を多用した柔らかい印象のミニマムな「こもり部屋」です。設計時は、実際の空間を院長先生と疑似体験しながら検討を重ね、安心して相談していただける空間(距離感)を計画しました。

着工後まもなく新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が発令されました。職人さんが密にならないように工程を組み直し、感染対策を十分に行いながら施工しました。また、選択時には強く意識していなかった素材の抗菌などの役割について考える良い機会となりました。採用している自然素材は、抗ウィルス作用や抗菌作用、調湿性、VOC吸着作用などが期待できる素材です。いつも採用している素材ですが、改めてその役割を考えさせられました。
換気については、熱交換型換気設備(第一種換気)を採用しています。熱交換することで、冬外気を取り入れると寒いとか、夏暑い外気がそのまま入ってきて不快ということがなく、季節を問わず快適に換気ができます。換気の重要性が叫ばれる中、患者さんに安心して診療を受けて頂ける設備をご用意できたと考えています。

設計をするのは私共ですが、お使いいただくのはお客様です。こちらの思いだけでは本来の建物の機能が発揮されません。設計の際に意図した内容がお使いいただく方にきちんと伝わるように、住宅で作成している「住まい方BOOK」の診療所版として「つくりかたとつかいかた」という小冊子を作成しました。そこには、素材の特徴や機能、手入れの方法、換気の運転方法など、院長先生やスタッフの方々に愛着を持ってより良く建物を使って頂くための内容が掲載してあります。

建築概要

計画地 東京都八王子市
敷地面積 -㎡
床面積 74.4㎡(1階テナントスペース)
構造・規模 RC造 9階建
竣工年 2020年

Sketch