南信州の建築探訪

お盆休みは、パートナーの実家がある飯田市に、ワンコを連れて里帰り。少し時間が取れたので、市内の古い建築を見て回りました。

 

最初に訪れたのは、古い蔵を利用したカフェ「ATAGO」。このカフェの魅力は、その外観にあると思います。剥がれたなまこ壁を活かして補修してあり、とてもいい感じの風合いが出ています。

 

 

内部も酒蔵だった様子を残しながら、客席が配置されています。吹き抜けの上部には酒樽が見え、素敵です。そこでワッフルとカフェオレを美味しく頂いて、一息ついたところで、次の場所へ移動しました。

 

 

この建物は、舞台校舎と言われている「旧座光寺麻績(おみ)学校校舎」です。明治6年から昭和59年まで111年間も使用されていた校舎だそうです。舞台校舎の所以は、建設当初、歌舞伎舞台と学校を兼ねた建物として建築されたことにあるそうです。

学校利用の時は、1階が教員の空間で2階が子供たちの教室、歌舞伎を演じる際には、1階を舞台とし引戸を開け放って利用したとのこと。ただ、学びと娯楽が同じ場所にあるとはなにごとか、というお咎めがあり、舞台としての利用は多くなかったようです。

 

何といっても大胆な8間(約14.4m)無柱で飛んでいる虹梁が素晴らしい。ダイナミックな丸太の梁成は600~800㎜程あります。そしてこの虹梁は、歌舞伎を演じる際に舞台空間と正面の屋外空間を利用した観客席との間を仕切るプロセニアムアーチの役割もなしているようです。さらに、1階の主要な4本の柱も取り外し、演じる空間を確保したそうです。こんなに大空間で取外し式の柱なんて聞いたことがありませんでした。

 

この建物は、異なる空間利用の要望を満たすために、棟梁の腕と経験で考え出された工夫で満ちています。クライアントの要望を解決するデザインの提案、いつの時代も変わることはないのですね。勉強になりました。

いしざき